ええ、もうほんまに、どないして復讐してやろか、どんな事あってもきっとこの讐取ってやる、と、思うと同時にかッとなって、夢中でテーブルい手エ伸ばしてグラスに半分ほど残ってた葡萄酒ぐうッと一と息に飲み乾しました。
何しろその晩はさっきからの騒ぎでえらい疲れてましたところいさして、私かって不断ちょっとも飲んだことあれしませなんだよって、見てる間に酔い廻って来て、――それもええ心持にぽうッとなるのんと違て、頭が破れるようにがんがんして、胸のあたりがむかついて来て、体じゅうの血イ一遍に髪の毛の方い上って来るような気イするのんで、はあはあ苦しい息吐きながら、「ようもようもみんなで大馬鹿にして、今にどうするか見てたらええ」と、口い出していわんばっかりに一途にそのこと考えつめてますと、激しい動悸が、樽の口から酒がこぼれるような音立ててどきんどきん鳴ってますのんが自分にもちゃんと分るのんですが、気イついてみますといつの間にやら夫の胸も同じようにどきんどきんいう音立てて、はあはあ熱い息吐いて、互の呼吸と動悸とが一緒に時を刻みながらだんだん強うなって行って、二人の心臓が一時に破裂せエへんか知らんと思われた途端に、いきなり私は夫の腕でぎゅうッと抱きしめられました。
次の瞬間に夫のはあはあいう息が一層近よって、燃えるような唇が耳たぶに触れて、「お前、よう帰って来てくれたなあ」――と、そないいわれたはずみに、どうした加減か急に涙がこみ上げて来て、「くやしいッー」と、身イふるわして泣きながら、今度はこっちからしがみ着いて、「くやしいッ、くやしいッ、くやしいッ」と、夫の体掻きむしるように揺さ振りました。