そら私かってちょっとでも余計夫の傍に引っ着いてたい、離れたらその間に邪念妄想が起る、夫の顔さい見てたらあの人のこと忘れられるやろ思いますよって、一緒に着いて行きたいですけど、いや、そやない、もしひょっとして途であの人と会うたりしたら?
……もうそんなことあったかて物いエへん気イやけど、そんでもばったり顔見合わしたらうちどうするやろ?
青なって、ぶるぶる顫て、一と足も出んようになって、門で倒れてしまうかも分れへん思いましたら、外い出るのが恐うて、大阪どころやあれしません、つい電車路ぐらいまで行きましたかて、そやない人の影見てもはっと襲われたみたいに、慌てて家い飛んで逃げて、どきどきする胸おさえながら、いかん、いかん、ちょっとでも出たらいかん、ここ暫くは死んだ気イになってすッ込んでよ、水仕事でも拭き掃除でも何でも構わんと精一杯働いてよと、自分で自分にいうて聞かすのんです。