あいにく夫はまだ帰って来てませんし、立ち上ったまま何処ぞ逃げ道でも捜すみたいにうろうろしてますと、取次に出た女子衆がバタバタ走って来て、「奥様!
奥様!
いうたなり顔の色変えてるのんで、「分ってる、分ってる、光子さんやろ」いいながら自分で玄関い出て行ことして、「あの、ちょっと、ちょっと、……」と誰を呼ぶのか分らんこといいながら、「あの、……ちょっと待っとくなはれいうて、下の八畳い通しといて」といい附けといて、二階い上って寝室のベッドの上で暫く動悸のしずまるのん待ってから、やっと起き上って、顔色隠すために頬紅少し濃いめにつけて、白葡萄酒一杯飲んで、思い切って降りて行きましてん。