奥様!
いうたなり顔の色変えてるのんで、「分ってる、分ってる、光子さんやろ」いいながら自分で玄関い出て行ことして、「あの、ちょっと、ちょっと、……」と誰を呼ぶのか分らんこといいながら、「あの、……ちょっと待っとくなはれいうて、下の八畳い通しといて」といい附けといて、二階い上って寝室のベッドの上で暫く動悸のしずまるのん待ってから、やっと起き上って、顔色隠すために頬紅少し濃いめにつけて、白葡萄酒一杯飲んで、思い切って降りて行きましてん。
わたしは仕切りの簾の向うに派手な模様がチラチラして、ハンカチで汗をおさえながらすわってはるらしい姿見ると、もうまた胸がどきんどきんいうて来ましたが、光子さんの方でも簾越しにこっち見てなさって、這入って行くのん待ち構えたように、「今日は」いうてニコニコ笑いなさるのんです。