「ふん、そやねんわ」と、光子さんは頷いといてから、「入院さしてほしいいうてるねんけど、入院さす訳に行かんいわれてんわ」と、なんや褄目の合わんこというて、それからぼつぼつ話し出すのん聞いてみますと、あの私から借った英語の本見て幾通りもの方法やってみたところが孰れもあんじょう行かんらしいので、ぐずぐずしてたら人目につくようになって来るし、気が気でのうて、綿貫の知ってる人に道修町の薬屋の番頭さんあるのん幸い、その本に書いたある処方に従うて、薬をもろて飲んだんやそうです。
尤も番頭さんには事情を明かしたんやのうて、ただ必要な薬品だけもろて、それをええ加減に調合したのんで、間違うてたんかどうか、よんべ俄かにお腹痛なり出して、お医者さん呼んでる間にえらい出血した。
そんでお医者さんに訳話して、どうぞ家の者に内証でどないぞして欲しいいうてお梅どんと二人で頼みますと、出入りのお医者さんでんねけど、「難儀ですなあ」いうてためいきつくばっかりで、「これはどうも私には困ります。