「そうかて、あてにこんな地獄みたいな苦しみさしとかんと、早楽にしてくれたらええのに、――姉ちゃんやったらお医者はんよりよう知ってるくせに、……」そないいい出したいうのんは、いつや私が「ほんちょっとした器具さいあったら何でもない」いうたことあったよってですけど、もう私にはさっきの「出る出る」いう騒ぎの時分から、今日のことがみんな狂言やいうことが分ってましたのんで、……ほんまいうたら、実はその前からだんだん気イ付いて来てながら、知って欺されてたのんで、光子さんかて私が欺されてる振りしてるのん見抜いてながら、何処までもずうずうしゅう芝居してはりましてん。
そんで、そいから先はお互が自分で自分欺き合うて、……もうそんなこと、先生はよう分ってはりますやろけど、結局私は、見す見す光子さんの仕掛けた罠い自分を落し込んでしまいましてん。
……はあ、その赤いのんは何を使たのんか聞かんとしまいましたんで、今でもときどき不思議に思いますのんですが、何ぞ芝居に使う血糊のようなもん隠しといたのんと違いますやろか。