「あてかていつまでも山の上にいてたい、なんぞお菓子ンでもたべて辛抱しとこう」いうて、昼御飯の代りに煮抜きたべながら、大仏殿の屋根から生駒山の方見てますと、「この前蕨や土筆たんと採ったわなあ、姉ちゃん」いうて、「もう後の山い行ってもなんにも生えてエへんやろか。
「そら、今頃行たかてなんにもあれへん。
「そんでもこないだ行たとこい行てみたいわ」いいなさって、あれから後の山いつづく谷の方い下りて行きましたら、春でもあの辺はあんまり人の行かんとこですよって、夏はなおさら淋しいて、木や草ばっかり仰山繁ってて、なかなかそんなとこ、一人やったら来られへんような物凄い気イするのんですけど、二人は結局誰も見てる者ないのんええことにして、草のぼうぼう伸びてる蔭に、それこそほんまに、大空の雲よりほかに知ってる者のない隠れ場所見つけて、「光ちゃん、……」「姉ちゃん、……」「もうもう一生仲好うしょうなあ。