「そんでもこないだ行たとこい行てみたいわ」いいなさって、あれから後の山いつづく谷の方い下りて行きましたら、春でもあの辺はあんまり人の行かんとこですよって、夏はなおさら淋しいて、木や草ばっかり仰山繁ってて、なかなかそんなとこ、一人やったら来られへんような物凄い気イするのんですけど、二人は結局誰も見てる者ないのんええことにして、草のぼうぼう伸びてる蔭に、それこそほんまに、大空の雲よりほかに知ってる者のない隠れ場所見つけて、「光ちゃん、……」「姉ちゃん、……」「もうもう一生仲好うしょうなあ。
「あて姉ちゃんと此処で死にたい。
――と、お互にそないいうたなり、それから後は声も立てんと、どのくらいそこにいたのんやら、時間も、世の中も、何も彼も忘れて、私の世界にはただ永久にいとしい光子さんいう人があるばっかり。