それに極まり悪いいうても初めの日イだけで、馴れてみましたら女子衆やかいも心得てて、帰りがおそなった時やらは、家の方い電話かけて褄目合うようにしてくれますし、……そんな訳で、しまいには別々に出かけて行って彼処から電話で呼び出したり、何ぞ急用出来た時にはお梅どんから知らしてもろたり、……ま、それもよろしいのんですけど、光子さんの家ではお梅どんだけやのうて、お母さんも、外の女子衆も、みんながそこの家の電話番号知ってるらしいて、ときどき私や光子さんにかかって来ることありますのんで、何ぞ家の方ええように欺したあるに違いない思てたのんですが、或る日一人で先行て待ってたあいだに、「へえ、そうだす、……へえ、いいえ、あのう、さっきから待っておりますけど、まだ来やはれしまへん。
……へえ、へえ、そないいうときます。
……いいえ、どうしまして、……私の方こそいつも奥様出やはりましてえらいお世話になりまして、……」と、電話口でそない仲居さんがいうてるのんが何や知らんけったいですのんで、「今の電話、徳光さんとこから違いますか?