「さっきから此処の家い来てんねん。
――私も多分そんなこッちゃろ思てましたのんですが、「そんなら此処い呼ぼなあ」いいなさって、「あの人に来てもろて頂戴」いうと、直きに綿貫が這入って来ましてん。
「やあお姉さんですか……」と、この前の時は「奥さん」いうたのに「お姉さん」いう言葉使て、私を見たら恐縮したみたいにズボンの膝そろえて畏まって、「あの時はまことにえらい失礼しまして、……」いうて、――なんせいつやらは夜おそうもありましたし、それにあんな訳で人の着物借り着してましたし、その日イは明るい真ア昼間のことですのんで、紺の上衣に白セルのパンツ穿いてるのんが、違た人のような印象受けたんですけど、歳は二十七、八ぐらいで、この前の時の感じよりもっと顔の色白うて、やっぱり「美男子やなあ」とは思いましたけど、正直のところいうたら、表情が乏しいて、絵エに画いたように綺麗なばっかりで、ちょっとも近代的なことあれしません。