そいからさっきの綿貫のことは、そんな調子で、折角引き合わしてもろても何やお互に探り合いしててちょっとも気イ許せしませんのんで、その日イ一ぺん会うたなり、孰方からも「会お」いい出したことあれしませんし、光子さんも二人を仲好うさすことはあきらめてしもたらしいのんですが、なんでも三人で松竹い行た、――あれから半月ぐらい後でしたやろか、ゆうがた、五時半ごろまで遊んでましたら、「姉ちゃん先行んでくれへん?
あてもうちょっと用あるよって」と、追い立てるようにしなさるのんで、常時のことですよって腹も立てんと、「そんなら先行ぬわ」いうてその宿屋のろうじ出ましたら、小声で「お姉さん」と後から呼ぶもんあるのんで、振り向いて見たら綿貫ですねん。
「お姉さん、今お帰りがけですか」いいますよって、「へえ、そうです、光ちゃん待ってはるさかい早行ったげなはれ」と、わざと皮肉にいいながら、私はタクシー掴まえるつもりであの通りを宗右衛門町の方い歩いて行きますと、「ちょっと、……ちょっと、……」いうて引っ附いて来て、「僕、実はお姉さんに聞いてもらいたいことあるのんですが、差支いなかったら、一時間ぐらいこの辺散歩してくれませんか。