あてもうちょっと用あるよって」と、追い立てるようにしなさるのんで、常時のことですよって腹も立てんと、「そんなら先行ぬわ」いうてその宿屋のろうじ出ましたら、小声で「お姉さん」と後から呼ぶもんあるのんで、振り向いて見たら綿貫ですねん。
「お姉さん、今お帰りがけですか」いいますよって、「へえ、そうです、光ちゃん待ってはるさかい早行ったげなはれ」と、わざと皮肉にいいながら、私はタクシー掴まえるつもりであの通りを宗右衛門町の方い歩いて行きますと、「ちょっと、……ちょっと、……」いうて引っ附いて来て、「僕、実はお姉さんに聞いてもらいたいことあるのんですが、差支いなかったら、一時間ぐらいこの辺散歩してくれませんか。
いうのんです。