そいからいつや笠屋町で着物取られた時にしたかて、綿貫は私呼ぶのんに反対やった。
もうあないになってんやったら度胸きめて、仲居さんの着物借って帰ったらええ、そんで「こないこないの訳で深う約束した男あります」いうたら、出来たことしょうがないよってかいって早結婚出来る、出来なんだら駈け落ちする覚悟きめたら、ちょっとも恐いことあれへんのに、あんな時に何も知らんお姉さん呼ぶやなんて、そんな厚かましいこと出来るもんか、第一呼んだかて来てくれへんにきまってるいうてんけど、光子さんは「着物なかったら今晩家い行なれへん」いうてどないしても聴きはれへなんだ。
「それやったら、いっその事こいから何処ぞい逃げよやないか」いうても、「そんな事したら後のために悪いさかい、あてが巧アいこというて姉ちゃん呼んで見せる。