けど姉ちゃんに蔭でいろいろな中傷したりするのんやったら、もうあんな人、可哀そうなことも何もあれへん、自分が今みたいになってしもたのんも元はいうたらあの人や、自分の不仕合わせはみんなあの人の仕業やいうて、またえらい泣きなさって、そいから綿貫ちゅうもん知った時のことから始めて委しいに話しなさって、なんでも二年前の夏、浜寺の別荘い行てた時分、お互に物いうようになって、或る晩散歩に誘い出されて、海岸に置いたある漁船の蔭に連れて行かれた。
そいで夏過ぎてからも、大阪の家が近いとこにあったさかい常時孰方ぞから呼び出しては逢うてたら、或る時女学校時代のお友達から綿貫のことについて妙な噂あるのん聞いた。
そのお友達いうのんは、いつや二人が宝塚歩いてるとこ見たことあるのんで、そののち朝日会館の映画の夕の時やったかに、光子さんが一人で屋上庭園に出てなさったら、「徳光さん」いうて後から肩たたいて、「こないだあんた綿貫さんと歩いてたなあ」いうのんで、「あんた綿貫さん知ってるのん?