なんでもそれ分ったいうのんは、その光子さんのお友達の知ってる人が綿貫と相愛の仲になってて、人頼んで結婚申し込んだところが、何や向うの親たちがええ加減なこというてちょっともハッキリせえへんのんで、本人同士は真面目に結婚望んでるさかい是非承知して下さいいうたら、栄次郎は実は訳あって一生嫁持たさんつもりですいうのんで、だんだん調べたら、子供の時分にお多福風にかかったのんが元で睾丸炎になった、――私、そんなことよう知りませんけど、お医者はんに聞きましたら、お多福風から睾丸炎になるいうことかてあるもんやそうですなあ?
尤もそないいうてるだけで、ほんまは極道したのんかも分れしませんけど、とにかくそいからその娘さんえらい綿貫憎んでて、――そら考えたら可哀そうでもありますねんけど、そんなんやったら人に交際求めたりイヤらしい手紙くれたりせなんだらええのんに、「あんたは理想の妻や」とか何とか巧いこというてたばっかりやない、散歩いうたらきっと暗いとこい連れて行ったりしたのんは、今から思たら自分がそんな体やさかいそないな事で満足してたのんで、つまりいうたら恋愛の仮面被って人玩具にしてたのんや。
けど綿貫はそういう時に、「僕は結婚せん先に肉体的の関係結ぶいうのん罪悪や思います」いうのんで、しッかりした人や思て感心してたのんがなお腹立つ。