いうよって、「何でや知らんこないこないの噂ありますねんけど」いいなさって、こうなったらうちもあんた捨てる訳に行かんよって、一緒に死んで頂戴いいなさったら、そいでもまだ「そんな噂うそや」いうてましてんけど、探偵の報告書出して見せなさったのんで、その時いうたらなんともいえん顔つきして、「悪かったです、堪忍して下さい」いうて、「一緒に死にます」いいましてんと。
けどなかなか死ぬ訳に行けしませんし、さんざん恨みいうてしもたらまた可哀そうになって来て、ついぐずぐずに会うてなさった。
それいうのんが、光子さんかて心の底ではやっぱり綿貫のこと忘れること出来んと、一日も長う一緒にいてたいいう気イあったのんですやろが、綿貫の方でもそれ見て取って、自分は今まで、自分の体の秘密知れたら、どない愛してくれてる人でもきっと自分を捨てるやろ思て隠してた、自分に欠陥あるいうこと承知して愛してくれるのんやったら、自分かて何で隠すもんか、自分はこんな体になったのん不仕合わせやとは思うけど、そない重大な欠点やとは思てえへん、それで男子の資格ないいうたら、男子いうもんのほんまの価値何処にあるのんや、男子ちゅうたら外に現われた恰好ばっかりできめるのんか、そんなんやったら男子でのうてもちょっともかめへん、深草の元政上人は男子の男子たる印あったら邪魔になるのんで、灸すえたいうやないか、男子の中で一番えらい精神的な仕事した人は、お釈迦さんでもキリストでも中性に近かった人やないか、そやさかい自分みたいなんは理想的人間や、そないいうたらギリシャの彫刻かて男性でも女性でもない中性の美現わしてあるのんやし、観音さんや勢至菩薩の姿かてそうやし、それ考えても人間の中で一番気高いのん中性やいうこと分ってる、自分はただ愛する人に逃げられるのん心配して隠してたんや、ほんまいうたら、恋愛にしたかて子供生んだりするのん動物の愛で、精神的恋愛楽しむ人にはそないなことやかい問題やあれへん。