それに口でいうのんとお腹の中とはまるきり反対で、出来るもんなら一人前の男と同じに奥様持って暮らして行きたい、世間欺すばっかりやのうて、自分の心まで欺して、ちょっとも外の男と違たとこないように思てたいいう気イあるばっかりか、光子さんみたいな人一倍綺麗な奥様持って、世間の奴らアッといわしてやりたいいう虚栄心まであるのんで、せえだい焦ってて「そんな一時逃れいうて、ええ縁談あったら行くつもりやろ」いうようなイヤ味いいますねん。
そいで光子さんは、どない親にいわれてもきっと余所い嫁に行けへん、今のとこ差し迫った縁談あるのんでもなし、そのうち自分も二十五になったら自由結婚出来るようになるし、きっとええ折あるやろさかいまあまあもうちょっと辛抱してて、……そやなかったら死ぬより外に道ないいうて、ようよう納得さしましてんと。
光子さんのその頃の気持、「ほんまのとこ自分にも分らん」いうてなさるのんですが、初めのうちはそないいうて宥めといて、どないぞして切れてしまいたい思てなさったのんは確かですねん。