そいで綿貫にはこないこないの噂あるのん幸いにこないな人道具に使てる、そないした方が家空けるのんにも工合ええさかいいうてなさったのんですが、それをそんなり真に受けるような綿貫と違いますよって、うわべは「そうですか、そらその方がええでしょう」いいながら心の中では嫉妬の刃研ぎすましてて、何ぞ事さいあったら私との仲割いてやろ思てたのんに違いないいうのんは、あの笠屋町で着物盗まれた事件にしたかて、今考えたらどうも怪しい、あの時別の座敷で博奕打ってるもんあったとか、刑事乗り込んで来たとかいうのんはみんな根エも葉アもないことで、彼処の家の人に頼んで不意に光子さんビックリさして、逃げてる間に着物すっくり隠すように初めから段取り極めといた。
――それが、あの日の昼、私のとこい来なさる前に三越い買い物に行きなさったら偶然綿貫に会いなさったのんで、こいから柿内の姉さんとこ行て帰りにずっと笠屋町い廻るさかい待ってて欲しいうて別れなさった。
そいで綿貫は揃いの着物着てなさったこと知ってましたよって、こりゃええ機会や、あの着物ないようにしてやったらどうしても私のとこい電話かけるようになる、そしたら私かて愛憎尽かすやろいうように考えて待ってる間にあの家のもん買収してこないこないせえいうといた。