夫は直きに座ア立って、「えらいお邪魔しました、どうぞまたお出かけになれるようになったら遊びに来て下さい」いうて、「もうおそいさかいお前も一緒に帰ったらええ」いいますのんで、「何ぞ訳あるに違いないよって今日はこれで帰る。
明日きっと待ってて頂戴」と光子さんにそうッというといて、しぶしぶ連れられて出て来ましたら、「バスに乗って行こ」いうて四つ橋の停留場い出て、そいから阪神で家い帰るまで、夫は不機嫌に黙ってしもて、何いうても生返事しかせえしません。
家い這入ると洋服も脱がんと、「ちょっと二階いおいで」いうてどんどん上って行きますのんで、こっちもあらかた覚悟きめて附いて行きますと、寝室のドーアぱたんと締めて、「まあそこいおかけ」と差向いに椅子にかけさして、暫くは物もいわんと、ほっと息ついて考え込んでるのんです。