「おい、黙ってたら分らん、返辞したらえやないか」と、夫は出来るだけ腹の虫おさえて、やさしい、静かな声出して、「黙ってるとこみたら、これお前書いたと認めてもええねんなあ?
いうて、そいからだんだん話し出すのん聞いてますと、五、六日前に今橋の事務所の方い突然綿貫が訪ンねて来て面会求めた。
そいでどんな用事か思て応接間い通して会うてみたら、「今日お訪ンねしたのんは、実は折入ってお願いしたいことあるのんです」いうて、「多分あんたも御承知でしょうが、僕と徳光光子とは結婚の約束したあるばかりでなく、既に光子は僕の種までも宿してますのんに、こっちの奥さんが中に這入っていろいろ邪魔しなさるのんで、光子の仕打ちこの頃日増しに冷淡になって、今の工合ではいつ結婚してくれるのんか分らんような状態にある。