まして今のお話のようやと、この誓約書は園子の意志から出たんやのうて、半ば強制的に結ばれたように思われるが」いうてやった、そしたら恐縮するかと思いのほか相変らずニヤニヤ笑てて、「その書付にもある通り僕と園子さんとは徳光光子に依って結ばれてるのんで、その関係は園子さんの夫であられるあんたの利害とは始めから衝突してます。
もし園子さんがあんた眼中に置かれたら、光子とあないな間柄になることもなかったやろし、こんなもん交すまでもないし、それこそ僕の何より望むとこですけど、妻たる人が自ら進んでしなさるもんを他人の僕がどないすることも出来しません。
僕にいわしたらこの書付のような関係認めることが、既に園子さんに対して非常な譲歩してるのんです」いうて、あべこべに夫の監督の不行き届き恨むような口ぶりで、兄弟の約束したいうのんは密通したのんと訳が違う、そやから自分は不道徳なことしたとは思てエへんいうのんです。