一体あんたは、まさか園子さんに逃げられるようなヘマな事しなさらんやろ思いますが、そいでも万一逃げられた場合にはどないなさいますか、逃げたもんには未練ないいうてアキラメておしまいになりますか、それとも何処まででも追いかけて行って取り戻そいうおつもりですか、そこのとこをハッキリきめといて下さい」いいますよって、「僕は自分の行動について、その時になって見んと分らんこと今から他人に約束したり、それに掣肘しられたりするのんイヤやのんです。
まして夫婦のあいだのことはあくまで夫婦のあいだだけで解決つけます」いいましたら、「しかしあんたは、どんな事あってもよもや園子さんを離縁なさるようなことありますまいな」いうのんですて。
そのいい方が変に厚かましいて、ひつこうにねちねち絡み着いて来ますのんで、自分の妻離縁しようとしまいと、余計なお世話やないか、何もあんたがそんな心配する必要ありますまいいうてやりましたら、「いや、そいでもあんたは園子さんの実家に恩義あるはずや」とか、「ちょっとやそっとの不都合があったからいうて、園子さん追い出したら義理が済まんやろ」とか、多分光子さんから聞いたのんですやろが、そんな内輪の事情までちゃんと知ってて、「あんたも立派な紳士やよって、まさかそんな不徳義なことしなされへんやろ思います」いうたりするのんで、夫もしまいには腹に据えかねて、「あんたは一体何しに来たのんや。