そのいい方が変に厚かましいて、ひつこうにねちねち絡み着いて来ますのんで、自分の妻離縁しようとしまいと、余計なお世話やないか、何もあんたがそんな心配する必要ありますまいいうてやりましたら、「いや、そいでもあんたは園子さんの実家に恩義あるはずや」とか、「ちょっとやそっとの不都合があったからいうて、園子さん追い出したら義理が済まんやろ」とか、多分光子さんから聞いたのんですやろが、そんな内輪の事情までちゃんと知ってて、「あんたも立派な紳士やよって、まさかそんな不徳義なことしなされへんやろ思います」いうたりするのんで、夫もしまいには腹に据えかねて、「あんたは一体何しに来たのんや。
何のためにそんな関係もないこといつまでもべちゃべちゃしゃべってるのんや、あんたに注意してもらわんかて僕は僕で紳士の道守りますけど、それがあんたの利害と一致するかどうかは保証する訳に行けしませんから、どうぞそのつもりでいて下さい」いうたら、「ふん、そうですか、そんなら折角ですがこの書付お貸しすること出来ません」いうて、膝の上い置いてあったのん丁寧に封筒い入れて、内ぼところい収うのんやそうです。
夫はそれが欲しかったことは欲しかったけど、そんな行きがかりになってしもたらもうしょうがない、かいって弱味見せたらあかん思て、「ええ、ええ、僕も強いて拝借しようとは思いませんから、御自由にお持ち帰り下さい。