そしたら独りごとのように「とかく夫が細君に甘いのが間違いの起る原やのんですな」いうて、「なあに、この書付と同じもんが園子さんのとこいも行ってますよって、何処ぞ捜しなさったらきっと出て来ますで。
尤もそんなことしなさらんかて、腕を出さして見なさったら証拠が残ってるはずです。
――と、そないな憎まれ口いうて、「お忙しいとこえらいお邪魔しました」と、わざと落ち着いて挨拶して出て行きますのんで、それを廊下まで送って行って、呆れた奴や思いながら部屋に戻ってほっとしてますと、ものの五分ぐらいした時分、またコツコツとドーアをノックして、「やあ、只今は失礼しましたが、ちょっと、あのうもう一遍お邪魔さしてもらいます」いうて、何と思たのんか、今度は妙にニコニコとあいそ笑いしながら、そのほん五分ぐらいのあいだにまるで人間変ったみたいな表情して這入って来ましてん。