どうせ此処まで知れてしもた以上、自分と光子さんとの間柄納得さして、それ承認してくれたら、自分は夫大事にする、きっと夫婦仲も円満に行く、綿貫の奴どんな妨害したところで、証拠の書付こっちに取ってしもたあるし、あんな男のいうことやったら信用するもんないやろし、たとい光子さん何処ぞい行きやはっても、ちゃんとした家庭の奥様同士どないに仲好うしてたかて誰が何ちゅうもんあるやろ。
前とちょっとも変ったことないばっかりか、前よりしっくりと行くのんやし、むやみに事荒立てるよりもその方が何ぼ優しか分れへん。
夫は私に無鉄砲な事しられたら、第一に心配やのんで、お腹の中では私以上に離縁恐れてて、事勿れ主義に傾いてることよう分ってますさかい、「そないに束縛するのんならほんまに家出してやるぞ」いうとこ見せて、そいからそろそろ注文持ち出して、――と、私はあらかた思案をきめて、二日かかっても三日かかってもきっとしまいにはいうこと聴かしてやるつもりで、なるべく反感挑発せんように、何いわれてもただ大人しいに無言のうちに涙ぐみながら、堅い決心隠してるみたいに割りと落ち着いてましたのんで、それが夫にはなお気味悪うて、その晩はとうど夜の明けるまで一睡もせんと傍に着いてて、便所いまで一緒に来るのんです。