その二十九
そないいうて綿貫は、「僕と姉ちゃんと証文換えことしてたこと、あんたかて薄々知ってたやろが、もうあんなもん反古になったさかい、証拠のために今橋い預けて来た。
ここに預り証書ある」いうて、懐から出して見せて、「そら、この通り書いたあるやろ、――下名ハ下名ノ妻ガ妻タル者ノ行為ニ悖ルコトナキヨウ――」と一々箇条書き読んで聞かして、それも自分の都合悪い但し書きのとこ手エで隠してて、「柿内氏からこの書付取った以上は、もう姉ちゃんの方心配ないよって、あんたも僕に証文入れなさい」いいながら、また懐からその文案みたいなもん出して見せますねんと。