そいですさかい十一時半前にはもう別荘い着いてしもてて、お梅どんの方が三十分も後れてやって来て、「えらい早よおましたなあ。
ほんまにこない巧い工合に行たことあれしません。
さあ、さあ、今の間アにしやはらんと、ぐずぐずしてはったら電話かかって来まっせ」いうて、母屋から大分離れた庭の中に建ってる「何とか庵」たらいう葛屋葺きの家の方い二人追い立てるようにして、そこい這入ったらもうちゃんと枕許に薬やら水やら用意してあるのんで、私は洋服浴衣に着換えて差向いにすわってみましたもんの、これがこの世の見納めやないか、ほんまに死ぬのんやないやろか、「もし間違うてあて死んだら光ちゃん死んでくれるなあ?