その三十一
まあ、そんなこと、どっちが先や詮議立てしたとこで無駄ですねんけど、一ぺん間違いあってからは、私に済まん思いながら同じ過ち繰り返してたらしいのんで、それ考えたら全然夫に責任ないともいわれしませんのんですが、私としたらその点に同情出来るいうのんは、前にもたびたびいいました通り、夫と私とは肌合エへんのんで、私がいつも愛の相手外に求めてたように、夫にしたかて無意識のうちにそれ求めてたのんに違いあれしません。
おまけに外の男みたいに芸者遊びするやとかお酒飲むやとかして、物足らなさ充たすちゅうこと知らん人だけに、なおのこと誘惑に陥りやすい状態にあったのんで、一旦そないなってしもたら、堰切った水みたいに、盲目的な情熱が意志や理性の力踏みにじくって燃え上って来て、光子さんより夫の方が十倍も二十倍も夢中になってしもたのんです。