おまけに外の男みたいに芸者遊びするやとかお酒飲むやとかして、物足らなさ充たすちゅうこと知らん人だけに、なおのこと誘惑に陥りやすい状態にあったのんで、一旦そないなってしもたら、堰切った水みたいに、盲目的な情熱が意志や理性の力踏みにじくって燃え上って来て、光子さんより夫の方が十倍も二十倍も夢中になってしもたのんです。
そんな訳で、夫の心持の変化は大概諒解出来ますねんけど、いったい光子さんどういうつもりでいなさったのんか、そらまあ、ほんまに半分は寝惚けてなさって、ほんその時の出来心やったのんか、それとも或るハッキリした目的持ってなさったのんか、――つまり綿貫放る代りに夫とそういう風になって、私との間に嫉妬起さして、思うままに操ってやろ、――どうせ自分の崇拝者一人でも仰山寄せ着けときたい性分ですさかい、またしてもその悪い癖出しなさったのんか、そやなかったら「気イついてみたら済まんことした思てんけど、そいでもこないなった方が味方につけるのんに都合がええのんで」いうてなさったように、夫引き入れる手段やったのんか、なんせえらい複雑で裏には裏ある人の気持なかなか分れしませんけど、多分そんないろいろの動機に時のはずみも加わったのんやろ思いますねん。
ま、二人が自白しましたのんはずっと後のことですさかい、初めはそんな深いとこまで考えんと、寝ながらぼんやり「裏切られた」いう感じ持ってて、お梅どん枕許いやって来て「奥様、もう安心だっせ、あんた所の旦那様何も彼も聴いてくれはりました」いうてくれた時も、嬉しいのん半分と口惜しいのん半分で、そない喜びもせえしませなんだのんで、二人も私に感付かれたこと薄々悟ってたらしいのんです。