――と、めったにうそついたことない人が、恋のためにはそないなことまでするのんですやろか、巧いこというてお母さん円めてしもて、そいから綿貫のとこい出かけて、結局この方はお金で埒明いたいうて、例の新聞い売るいうてた証文の写真と、種板と、夫から渡したあった預かり証と、証拠になるもん全部取り返して来ましてん。
それが二日か三日のあいだにバタバタと片附いてしもたのんで、なんぼ夫が一所懸命になったにしても、あの綿貫がそないやすやす手エ引いたいうのんが、私も光子さんも何や腑に落ちんような気イして、写真の種板おこしたにしたかて複写したあるかも分れへんし、何企らんでるかも知れん、「なんぼお金やんなさった」いいましたら、「千円いうのん五百円にさした」いうて、「なあに彼奴かてカラクリの種こッきり僕に握られてしもてて、もうこれ以上オドシ利かん思たのんで金にする気イになったのんや」と、夫は安心し切ってるのんです。
そいでその時はすっくり私らの計画通りに行った形で、たった一人貧乏鬮抽いたのんお梅どんで、「そんなことになってたのんに、お前附いてながら主人に知らさんいう法あるもんか」いわれて、暇出されてしもて、えらアい私ら恨んでて、――そら、まあ、あないに骨折らしときながら、其方の方い飛ばしり行くのん考えなんだのんは何といわれても手落ちですさかい、出て行く時にいろいろなもん買うてやったりして機嫌取りましてんけど、このお梅どんから後で意趣返しされるやなんて、夢にも思い寄りませなんでん。