彼は妻がどんな着物を選択したか、その工合で自分の気持も定まるだろうと思ったのだが、生憎なことにはこの頃妻の持ち物や衣類などに注意したことがないのだから、―――ずいぶん衣裳道楽の方で、月々何のかのと拵えるらしいのだけれども、いつも相談に与ったこともなければ、何を買ったか気をつけたこともないのだから、―――今日の装いも、ただ花やかな、或る一人の当世風の奥様と云う感じより外には何とも判断の下しようもなかった。
「お前は、しかし、どうする気なんだ」
「あたしは孰方でも、………あなたがいらっしゃれば行きますし、………でなければ須磨へ行ってもいいんです」