………彼方は明日だっていいんですから」
美佐子はいつの間にかマニキュールの道具を出して、膝の上でセッセと爪を磨きながら、首は真っすぐに、夫の顔からわざと一二尺上の方の空間に眼を据えていた。
出かけるとか出かけないとか、なかなか話がつかないのは今日に限ったことではないのだが、そう云う時に夫も妻も進んで決定しようとはせず、相手の心の動きようで自分の心をきめようと云う受け身な態度を守るので、ちょうど夫婦が両方から水盤の縁をささえて、平らな水が自然と孰方かへ傾くのを待っているようなものであった。
………彼方は明日だっていいんですから」
美佐子はいつの間にかマニキュールの道具を出して、膝の上でセッセと爪を磨きながら、首は真っすぐに、夫の顔からわざと一二尺上の方の空間に眼を据えていた。
出かけるとか出かけないとか、なかなか話がつかないのは今日に限ったことではないのだが、そう云う時に夫も妻も進んで決定しようとはせず、相手の心の動きようで自分の心をきめようと云う受け身な態度を守るので、ちょうど夫婦が両方から水盤の縁をささえて、平らな水が自然と孰方かへ傾くのを待っているようなものであった。