と、彼女は立って、箪笥の抽出しから、たとうに包まった幾組かの夫の衣類を取り出すのであった。
着物にかけては要も妻に負けない程の贅沢屋で、この羽織にはこの着物にこの帯と云う風に幾通りとなく揃えてあって、それが細かい物にまでも、―――時計とか、鎖とか、羽織の紐とか、シガーケースとか、財布とか、そんな物にまでおよんでいた。
それを一々呑み込んでいて、「あれ」と云えば直ぐその一と組を揃えることの出来るものは美佐子より外にないのであるから、この頃のように夫を置いて一人で外へ出がちの彼女は、出かける時に夫のために衣類を揃えて行くことが多かった。