美佐子はそれらの顔の中にわざと夫と向い側にかけて鼻のあたまを毛皮の襟巻のふかふかとした中へ埋める程にして、縮刷本の水沫集を読んでいるのである。
買い立ての白クロースの、ブリキのようにピンと尖った表紙の背を掴んでいる指には網目に編んだサファイア色の絹の手袋が篏まっていて、こまかい網の目の隙間から、研かれた爪がチラチラと覗いていた。
電車の中で彼女がこう云う位置を取るのは、それが殆ど二人で外出する時の習慣のようになっていた。
美佐子はそれらの顔の中にわざと夫と向い側にかけて鼻のあたまを毛皮の襟巻のふかふかとした中へ埋める程にして、縮刷本の水沫集を読んでいるのである。
買い立ての白クロースの、ブリキのようにピンと尖った表紙の背を掴んでいる指には網目に編んだサファイア色の絹の手袋が篏まっていて、こまかい網の目の隙間から、研かれた爪がチラチラと覗いていた。
電車の中で彼女がこう云う位置を取るのは、それが殆ど二人で外出する時の習慣のようになっていた。