そう云えば旧式の芝居小屋は木戸口をくぐった時の空気が妙に肌寒い。
いつも晴れ着の裾や袂からすうッと風が薄荷のように体へ沁みたのを未だに記憶しているが、その肌寒さはあたかも梅見頃の陽気の爽やかさに似てぞくぞくしながらもここちよく、「もう幕が開いているんですよ」と母に促がされて小さな胸をときめかせつつ走って行ったものであった。
けれども今日の寒さばかりは廊下よりも客席の方がひとしおで、夫婦は花道を伝って行くときに何とは知らずに手足が引き締まるような気がした。
そう云えば旧式の芝居小屋は木戸口をくぐった時の空気が妙に肌寒い。
いつも晴れ着の裾や袂からすうッと風が薄荷のように体へ沁みたのを未だに記憶しているが、その肌寒さはあたかも梅見頃の陽気の爽やかさに似てぞくぞくしながらもここちよく、「もう幕が開いているんですよ」と母に促がされて小さな胸をときめかせつつ走って行ったものであった。
けれども今日の寒さばかりは廊下よりも客席の方がひとしおで、夫婦は花道を伝って行くときに何とは知らずに手足が引き締まるような気がした。