殆ど平土間の三分の二まではガラ空きになっていてほんの舞台に近い方に人がかたまっている中に、顱頂部の禿げた老人の頭とつやつやしいお久の円髷とが遠くの方から眼についていたが、渡りを渡って降りて来る二人にお久はそれと心づくと、
「お越しやす」
と小声で云いながら居ずまいを直して、場を塞いでいる蒔絵の提げ重を、一つ一つ丁寧に積み重ねて自分の膝の前に寄せた。
殆ど平土間の三分の二まではガラ空きになっていてほんの舞台に近い方に人がかたまっている中に、顱頂部の禿げた老人の頭とつやつやしいお久の円髷とが遠くの方から眼についていたが、渡りを渡って降りて来る二人にお久はそれと心づくと、
「お越しやす」
と小声で云いながら居ずまいを直して、場を塞いでいる蒔絵の提げ重を、一つ一つ丁寧に積み重ねて自分の膝の前に寄せた。