「やあ」
と云ったきり、一心に舞台の方へ首を伸べていた。
何と云う色か、緑系統には違いないが、ちょうど人形の衣裳のように派手で渋いところのある色合いの、昔の人が十徳にでも着そうな石摺りの羽織をぼってりと着込んで、風通大嶋の袷の下に黄八丈の下着を見せ、袂の中から升のしきりへ肘をついている左の腕をそのまま背中へ廻しているので、自然と抜き衣紋になっているためか猫背が一層円々と見える、―――着附と云い、姿勢と云い、そう云う爺臭い風をするのがこの老人の好みであって、「老人は老人らしく」と云うのを口癖のようにしているのである。