「有り難う、僕は昼間は飲まないんだが、………外套を脱いだら何だかうすら寒いから、少うしばかり戴きましょう」
髪の油か、何か分らないが、忍びやかな丁子のにおいに似たものが、彼女の鬢の毛と共にかすかに彼の頬にさわった。
彼は己れの手の中にある杯の、なみなみと湛えた液体の底に金色に盛り上っている富士の絵を視詰めた。
「有り難う、僕は昼間は飲まないんだが、………外套を脱いだら何だかうすら寒いから、少うしばかり戴きましょう」
髪の油か、何か分らないが、忍びやかな丁子のにおいに似たものが、彼女の鬢の毛と共にかすかに彼の頬にさわった。
彼は己れの手の中にある杯の、なみなみと湛えた液体の底に金色に盛り上っている富士の絵を視詰めた。