「そうどす、芝居のものは味のうてよう食べんお云やすよって、………」
美佐子がちらと二人の方を振り返ったが、すぐまた顔を舞台に向けた。
要はさっきから、彼女がときどき足を伸ばしては、足袋の先が夫の膝頭に触れると急いでそれを引っ込めるのに気が付いて、こう云う狭い升の中に入れられた自分たち夫婦の人目を忍ぶ心づかいを、ひそかに自ら苦笑しないではいられなかった。
「そうどす、芝居のものは味のうてよう食べんお云やすよって、………」
美佐子がちらと二人の方を振り返ったが、すぐまた顔を舞台に向けた。
要はさっきから、彼女がときどき足を伸ばしては、足袋の先が夫の膝頭に触れると急いでそれを引っ込めるのに気が付いて、こう云う狭い升の中に入れられた自分たち夫婦の人目を忍ぶ心づかいを、ひそかに自ら苦笑しないではいられなかった。