―――要は下膨れの頬を見せているお久の横鬢と、舞台の小春とを等分に眺めた。
いつもは眠いような、ものうげな顔の持ち主であるお久の何処やらに小春と共通なもののあるのが感ぜられた。
同時に彼の胸の中に矛盾した二つの情緒がせめいだ、―――老境に入ることは必ずしも悲しくはない、老境には老境でおのずからなる楽しみがある、と云う気持と、そんなことを考えるのが既に老境に入ろうとする兆だ、夫婦別れをしようと云うのは、自分も美佐子ももう一度自由に復って、青春を生きようためではないのか、今の自分は妻への意地でも年を取ってはならない場合だ、と云う気持と。