紅殻塗りの框を見せた二重の上で定規を枕に炬燵に足を入れながら、おさんの口説きをじっと聞き入っている間の治兵衛。
―――若い男には誰しもある、黄昏時の色町の灯を恋いしたうそこはかとない心もち。
―――太夫の語る文句の中に夕暮の描写はないようだけれども、要は何がなしに夕暮に違いないような気がして、格子の外の宵闇に蝙蝠の飛ぶ町のありさまを、―――昔の大阪の商人町を胸にえがいた。
紅殻塗りの框を見せた二重の上で定規を枕に炬燵に足を入れながら、おさんの口説きをじっと聞き入っている間の治兵衛。
―――若い男には誰しもある、黄昏時の色町の灯を恋いしたうそこはかとない心もち。
―――太夫の語る文句の中に夕暮の描写はないようだけれども、要は何がなしに夕暮に違いないような気がして、格子の外の宵闇に蝙蝠の飛ぶ町のありさまを、―――昔の大阪の商人町を胸にえがいた。