美しいもの、愛らしいもの、可憐なものである以上に、何かしら光りかがやかしい精神、崇高な感激を与えられるものでなければ、―――自分がその前に跪いて礼拝するような心持になれるか、高く空の上へ引き上げられるような興奮を覚えるものでなければ飽き足らなかった。
これは芸術ばかりでなく、異性に対してもそうであって、その点に於いて彼は一種の女性崇拝者であると云える。
もちろん彼は今までにそう云う恋愛なり芸術的感興なりを味わったことはなく、ただぼんやりした夢を抱いているだけだけれども、それだけひとしお眼に見えぬものに憧れの心を寄せていた。