「ユーナン王とドウバン聖者の話」、「三つの林檎の話」、「ナザレの仲買人の話」、「黒き島に住む若き王の話」、―――と、そう云う風に一々標題を漁っただけでは、どれが一番好奇心を充たすに足るものか見当が付かない。
もともとこの本は今まで完全な欧洲語訳がなかったと言われる亜剌比亜の物語を、リチャード・バアトンが始めて逐字的に英語に移して、バアトン倶楽部から会員組織で出版した限定版であって、殆ど各ページ毎に附いている親切な脚注を拾い読みして行くと、彼には何の興味もない語学上の研究もあるけれども、中には亜剌比亜の風俗習慣に関する解説や、多少話の内容のうかがわれる記載がないこともない。
たとえば「大きく空洞になっている臍は美しいものとされているばかりでなく、幼児にあっては健やかに生い立つ兆であると思われている」と云うのがある。