妻が夜中に嗚咽の声を漏らすことは、それまでにも例がなかった訳ではない。
結婚してから一二年の後、次第に性的に彼女を捨てかけていた当座、かれはしばしば女心の遣る瀬なさを訴えているこの声に脅かされた。
そうして声の意味が分れば分るほど、可哀そうだと思えば思うほど、なおさら自分と妻との距離の遠ざかるのが感ぜられ、慰める言葉もないままに黙ってそれを聞きすごしたものであった。
妻が夜中に嗚咽の声を漏らすことは、それまでにも例がなかった訳ではない。
結婚してから一二年の後、次第に性的に彼女を捨てかけていた当座、かれはしばしば女心の遣る瀬なさを訴えているこの声に脅かされた。
そうして声の意味が分れば分るほど、可哀そうだと思えば思うほど、なおさら自分と妻との距離の遠ざかるのが感ぜられ、慰める言葉もないままに黙ってそれを聞きすごしたものであった。