その前の晩もやはり夜通し泣きつづけて、彼女も要もほとんど寝られなかったので、さし向いになった夫婦は孰方も脹れぼったい眼をしていた。
実は要はゆうべのうちにも口を切ろうかと思ったのだが、弘が眼をさます心配もあり、暗い場所だとそれでなくても涙を用意している妻が一層感傷的になりそうなので、わざとさわやかな朝の時間を選んだのであった。
「このあいだから考えていたんだがお前に少し相談があるんだ」と、彼が出来るだけ軽快な、ピクニックにでも誘うような気楽な口調で切り出したとき、「あたしもあなたに相談したいことがあるのよ」と、鸚鵡返しに美佐子もそう云って、睡眠不足の眼のふちで微笑しながら煖炉の前へ椅子を寄せた。