と云うのは、さし向いになるとお久に物を云う老人の調子が、まるで別人のように優しく、声音までが変ってしまって、―――それもはっきり云うならいいけれど、向うでは又要に遠慮があるのであろう、ひそひそとあたりを憚るように、さも睡たそうに、半分口のうちで、「ふんふん」と甘えるように云うのである。
そこへ持って来て、ぱたん、ぱたんと、お久が足腰を揉んでいる音が枕もとへ響いて来て、それがなかなか止みそうもない。
老人が何かくどくど云うのに対して、お久の方は言葉少なに「へえへえ」と聞いているらしく、ときどき「何々どす」と答えるそのどすと云う語尾だけがぼんやり聞き取れる。