と云うので、表の座敷へ這入ってみると、宿の浴衣に市松の伊達巻姿で鏡の前にすわりながら、髷のあたまを梳櫛で撫でているお久の傍に、老人はビラを膝の上に載せて、老眼鏡のケースを開けたところである。
晴れ渡った海はじーっと視つめると瞳の前が黒ずんで来るほど真っ青に和いで、船の煙さえ動かないような感じであるが、それでも時たまそよ風を運んで来るらしく、障子の破れが紙鳶の呻りのように鳴って、膝の上のビラがかすかにあおられる。
内務省免許 淡路源之丞大芝居
と云うので、表の座敷へ這入ってみると、宿の浴衣に市松の伊達巻姿で鏡の前にすわりながら、髷のあたまを梳櫛で撫でているお久の傍に、老人はビラを膝の上に載せて、老眼鏡のケースを開けたところである。
晴れ渡った海はじーっと視つめると瞳の前が黒ずんで来るほど真っ青に和いで、船の煙さえ動かないような感じであるが、それでも時たまそよ風を運んで来るらしく、障子の破れが紙鳶の呻りのように鳴って、膝の上のビラがかすかにあおられる。
内務省免許 淡路源之丞大芝居