要は小屋がけの中へ這入るとそう云って老人と眼を見合わせた。
のどか、―――全く此処の感じは「のどか」の言葉で尽きている。
いつであったか四月の末のあたたかい日に壬生狂言を見に行ったとき、お寺の境内のうらうらとした春の気分が桟敷にいてもうっとり睡けを催して、遊んでいる子供たちのガヤガヤ云う話声や、露店で駄菓子やお面を売っている縁日商人のテント張りがびいどろのように日に光るのや、その他いろいろの雑音が舞台で演ぜられている狂言の、間伸びのした悠長な囃しと一つに融けて聞えて来る中で、ついとろとろと好い心持に眠りこけては、又はっとして眼をさます。