場面から云えば艶な所であるけれども、太夫の声も三味線のひびきも一向場内に徹らないので、ただその可愛い二人の男女の動くのばかりを見ていると、文五郎などが使うような写実的な感じではなく、人形たちも村の子供と一緒になって、無邪気に、あどけなく、遊んでいるかのようである。
お久は桟敷にしようと云うのを、人形芝居は下から見るに限ると云う意見の老人は「ここがいいね」と殊更土間へ席を取ったので、若葉の萌える頃ではあるが、据わっているとうすい坐布団をへだてて地べたの湿気と底冷えとが感ぜられる。
「おいどがちみとうてかなわんわ」