要は朝顔日記の中では誰でも知っている宿屋の段と川留の段とを見たことがあるだけで、「ひととせ宇治の螢狩り」とか「泣いて明石の風待ち」とかいう文句に聞き覚えはあるけれど、その螢狩りや舟別れやこの浜松の小屋の段やを見るのは初めてであった。
しかしこの物語は時代物のようであって、時代物に特有な不自然に入り組んだ筋や、残酷な武士道の義理責めなどが少くって、世話物のように素直に明るく、軽い滑稽味さえも加えてすらすらと運んであるのがいい。
いつ頃を背景にしたものか、ほんとうにあった事柄かどうか、駒沢と云うのは熊沢蕃山をモデルにしたのだと云うような話を聞いたこともあるが、なんだか徳川時代よりも一と時代前の戦国か室町ごろの物語を読むような所がある。